札幌から行く 『温泉宿』

    温泉宿 「宿泊」 好きな札幌人。風呂、食事、部屋、もてなし・・・ 「湯宿をめぐる冒険記」 & 「雑多な温泉話」

    嵐山光三郎 思い入れの湯宿へ

     作家の嵐山光三郎さんは、八雲町を「かすみ草が似合う北の町」と評し、いたく気に入っている。著書「日本百名町」(光文社知恵の森文庫)を拝見すれば、同町の小さな寿司屋で食したホタテやホッキが、美味いのに安すぎる経験から、好きになってきたようだ。銀婚湯に宿泊し「自然の渓谷を思わせる仙境の湯である」と、さらり記している。

     別の著書「温泉旅行記」(ちくま文庫)、「日本一周ローカル線温泉旅」(講談社現代新書)では、町営おぼこ荘に泊まって、町から運営委託を受けている女将さんを「クッキング悦っちゃん」と呼び、料理の達人と評していた。旦那さんは町内で鮮魚店を経営しており、「亭主が魚屋なんだから、おぼこ荘の魚料理がしぶとい筈だ」と嬉しそう。

     これら文章から、嵐山さんはおぼこ荘への思い入れが強いと見た。誰が泊まってもお褒めの言葉しか出ない銀婚湯ではなく、おぼこ荘に肩入れする辺り、ナイスな感性と膝を打つ。

     平成17年(2005年)9月、熊石町との10月合併を前に民営化され、運営委託を受けていた女将さんが引き継いだ。「食」と「湯」が良いらしい湯宿は、車で行かないと不便な山の中にある。レンタカー利用でようやく宿泊がかなった次第。



    囲炉裏で美味い

    食事処1
     この宿、夕食の食事プランが2種類ある。「和食膳」と「囲炉裏料理」だ。囲炉裏料理をチョイスした私は、専用食事処(掘りごたつ)で、山海の幸を炭火で焼きつつ、名古屋コーチンの鍋を食した。おお、これは美味い。和食膳より少々お高いのだが、それでも2人で泊まって2食付1人9,980円である。

    焼き物
     焼物のメニューは八雲牛やアワビも盛り込まれ、鮮度も抜群。湯宿でつれとともに囲炉裏を囲ってバーベキューみたいな感覚で、なんだか楽しい。こういう食し方って、シンプルゆえに、また泊まって食べたいな、と思うし、飽きたら「和食膳」をチョイスすれば良い。湯宿のメニューって「旅館料理」一辺倒で、いつ泊まってもワンパターンな食事内容が多い中、ここは選択肢があるので、リピートしようと思わせる底力がある。



    味噌汁色の湯 時々ミンミンゼミ

    ふろふろ
     鉛川沿いの露天風呂は、味噌汁色のような「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉」に満たされている。内風呂の湯は青緑っぽい感じで、自然って不思議だな。

     川のせせらぎをBGMに、ぬるめの露天風呂でまったりのんびり。時折、セミの声も聞こえる。あれ、道南のセミはミンミンゼミなのだな。そう言えば、前日泊まったきむら温泉旅館でも、背後の山々から「みーんみんみんみんみん~♪」の合唱が聞こえてきたし。なんだか本州みたいな「由緒正しきニッポンの夏」な気分を味わえた。

     元「公共の宿」だけに、ハードに温泉情緒は感じないものの、こぎれいで清潔感があり、素足で館内を歩ける点も良い。やっぱり「食」と「湯」が良くて、1人当たり福沢諭吉1枚でおつりが来るお得感。全国の湯宿を泊まり慣れた嵐山さんが気に入るのも、なんとなく分かる気がした。常宿にしたい、なんて久々に思ったりする。

    朝食
    ・白米(おひつ)
    ・ホタテ貝味噌汁
    ・とろろ
    ・いか松前漬
    ・温泉玉子
    ・サケ焼
    ・煮物
    ・ポテトサラダ
    ・味付のり

    飲み物
     飲み物は、冷水、お茶、ホットミルクに加え、コーヒー、レモンティー、玄米緑茶。

    食堂
     1階レストランで、7時半~8時半の間に食す。

    夕食
     電話予約時に囲炉裏料理コースを選んだ。

    食事処
     専用の1階食事処(掘りごたつ)で当方指定の18時から。

    ・生ビール、瓶ビール(大)500円
    ・各種サワー、カクテル400円
    ・おとべワイン(赤、白)360ミリリットル980円
    ・各種ジュース150円

     ほか、冷酒、焼酎、ウイスキーなどグラスで提供

    鉛川沿いの男性露天風呂
    温泉分析書 平成17年3月14日
    ・申請者 八雲町長
    ・源泉名 おぼこ荘3号井、5号井
    ・湧出地 八雲町鉛川622-2
    ・泉温45.5度
    ・毎分600リットル 動力揚湯
    ・pH6.4
    ・知覚的試験 微淡黄色 澄明 弱炭酸味 ほとんど無臭
      →試験室では微淡黄色 澄明黄褐色の沈殿有り ほとんど無味無臭
    ・蒸発残留物2.254g/kg
    ・成分総計3.831g/kg
    ・ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉

     湯使いは加水のみ。夜中も入浴OK。朝8時30分で終了。掃除した上で、日帰り入浴11~21時。450円。

    看板
    外観
     国道277号から横道に入り、鉛川沿いに今宵の温泉宿が見えてきた。もともと八雲町営だったが、2005年(平成17年)に民営化されている。客室19室。

    フロント前ロビーロビー売店 フロントで受け付けし、客室まで案内してもらう。


    客室前廊下
     そう言えば、玄関で靴を脱いだものの、スリッパはなく素足で歩く。