札幌から行く 『温泉宿』

    温泉宿 「宿泊」 好きな札幌人。風呂、食事、部屋、もてなし・・・ 「湯宿をめぐる冒険記」 & 「雑多な温泉話」

     先日、当ブログに「北海道温泉地案内」という昭和12年(およそ70年前)発行の本を記した時、「択捉、国後の温泉地が紹介されていてすごい」旨の感想を抱く一方、「これら温泉地は、今どうなっているのだろう」と感じた次第。

     北方領土って、日本の立場でみれば、第2次大戦後にソ連に不法占拠されて以来、いまはロシアが「実効支配」している地域。普通に暮らす日本人は足を運べないし、情報も少ないし・・・

     そう思っていた矢先、漫画実話ナックルズ2007年2月号(ミリオン出版)に、こんな記事を発見。「誰でも行ける!国後島への旅」。カラー3ページで著者の国後島旅行体験記を紹介していました。

    漫画実話ナックルズ 2007年2月号に掲載。写真・文 村上和巳氏
     記事を読むと、日本人が国後島へ行く方法は、「ロシアビザを取得」しサハリン経由で飛行機か定期船で。
     ただ、日本政府は領土問題が解決するまでは、この手法(ロシアビザを取得)での訪問は「自粛」を求めているそう。平成元年の閣議了解で「ソ連の不当占拠の下で北方領土入域は、領有権を主張する日本政府の政策と相容れない」から。

     これ以外の訪問方法は、日本とロシアの政府で合意している「ビザなし交流」。ただ、参加対象者は、旧島民と配偶者、返還運動関係者、議員、大手マスコミ正社員、学術研究者に限定されており、私を含めた大半の日本人は対象外ですね。

     まあ、ロシアビザ取得による訪問は、あくまで「自粛」だから、不法行為でもなく、この方法で旅行した著者は、こんなふうに雑誌で紹介しているのでしょうか。

    ストロボスキー温泉を紹介
     で、記事を読み進めると、温泉に関する記述を拝見。国後島に14ヵ所の温泉があり、その中で羅臼山近くにある「ストロボスキー温泉」を紹介していました。いわゆる野湯です。地元女性が水着着用で入浴するシーンが写真掲載されていました。
     この温泉、私が持っている北海道温泉地案内に掲載されている2ヵ所のうちの1つなのか、今度地図を引っ張り出してチェックしたい今日この頃です。

     11月末、札幌駅北口界隈(北大付近)の古書専門店へ立ち寄り、店員に「温泉関係の古い本はないか」と何気なく聞いたところ、「あれならあるかな」と、倉庫から探し出してもらった1冊。

    表紙。横書きのタイトルは右から読む
     手にとってぱらぱらページをめくりつつ、値段を訊ねると「6,500円です」。もし、ぐずぐずして保留すると、数日後にやっぱり買いたくて訪れた際、売り切れも十分あり得るだけに、思い切ってすぐに購入しました。変形B5判、114ページ。

    中身
     北海道景勝地協会が昭和12年(1937年)発刊。道内の温泉地98ヵ所を紹介しています。支庁単位で各温泉地の「温泉概要」「付近の景勝」「利用状況」「交通」「温泉の沿革」「旅館」「名産・土産物」を短い文章で明記(小さな温泉地は触れていない項目あり)。
     定山渓、登別、洞爺湖、芽登、野中、養老牛・・・ 現存する温泉地が多数。

     気になったのが、根室管内の「セセキ温泉」。これって、羅臼町の海辺にある野湯ではなく、択捉島の温泉でした。国有林内に温泉旅館が1軒あり、摂氏45度のアルカリ泉、宿泊料は1泊1~2.5円。
     羅臼町の「瀬石温泉」は、これとは別に紹介されており、夏場のみの旅館が1軒ある(当時)と記述されています。

     択捉島4ヵ所、国後島2ヵ所の温泉地が記されており、ここは日本の領土だったのだ、と改めて実感。いま、これら温泉地はどうなっているのか、想像を働かせてみましたが、どうも光景が思い浮かびません。

     自遊人8月号別冊「温泉図鑑」(カラット発刊)を買いました。今回のテーマは『連泊最前線』。表紙では「もっと気軽に温泉へ行きません?」の副題を掲げ、「源泉かけ流しで宿が清潔で料金もシンプル。こんな温泉、待っていた。プチ湯治の時代到来!」と読者に問いかけています。

    780円

     表紙をめくると今回の編集方針が記されており、「独断で思いっきり要約」すれば、

     『1泊ウン万円する高級な温泉旅館でみられる、食べきれない量の料理、過剰なアメニティー、だだっぴろい部屋は、本当に必要か。価格に見合った価値があるか、そう考える日本人が増えてきた。
     では、そもそも温泉旅館の価格を決める基準は何だろう。料理、建築、調度品、接客・・・ 美味しい料理は料理屋に行った方が良い。宿泊費に5万、7万出しても思い出に残る美味料理に出会うことはまずない。旅館と料理屋では”美味しい”のレベルがまったく違う。また、建築や調度品を眺めたければ、博物館や美術館に行けば安上がりだ。
     温泉旅館本来の価値はずばり「温泉」。しかし、その価値はかなり安く放置され、貸切風呂や部屋付露天風呂に目が向けられがち。かけ流し温泉の肌触り、湯心地、温泉の歴史や物語は長年無視されてきた』

     こんなふうに問題提起しつつ、今こそ「本物の温泉」にスポットを当てて宿探しすれば、1泊2食5,250円や素泊まり1,575円という安い宿もあると紹介し、さらに連泊すれば料金割引の宿も増えてきたので、長期休暇に連泊したり、別荘代わりに毎週末泊まったり、退職後に宿を転々と泊まり歩くのはいかが、と提言。
     その代わり、こうした宿は食事は質素で部屋は自宅より貧相、接客も必要最低限ながら、それでも価値はありますよ、と締めくくり、全国のお勧め宿を分かりやすく紹介しています。

     10泊20食付56,100円~、10泊素泊まり15,750円~といった連泊の宿の記事や、東鳴子温泉3泊4日プチ湯治レポ(登場する旅館大沼は宿泊経験あり笑顔)等を読みふけり、こんなに安くて、しかも風呂や建物の雰囲気も歴史が感じられ、紹介されている本州の温泉宿は良いなあ、と思いました。
     情報誌として宿選びに必要な情報を詳細に示しつつ、主義主張が押し付けがましくない程度に筋の通った編集で、「ご自由に宿を選び、楽しんでください」と感じられるスタンスに、「大人の雑誌だなあ」と感じます。旅慣れた人ほど、こういう情報をうまく活用して、お仕着せではないオンリーワンの旅を楽しむのでしょうね。

     ちなみに、この8月号別冊には、自遊人名物の「日帰り温泉無料パスポート」はついていません。7月26日発売の自遊人9月号に80軒分つけるそうです。
     GWに泊まった温泉民宿 赤湯(青森県大鰐温泉)休憩室に本棚があり、風呂上がりの夜中にのぞくと、「新しい日本」(国際情報社)という全24巻のグラビア誌を見つけました。

    新しい日本

     副題が「目で見る文化地理シリーズ」。日本の各地域ごとに編集され、その土地の経済・文化の現状が写真とともに解説。編集顧問に井上靖氏(作家)、岡本太郎氏(画家)らが名を連ね、写真の「北海道 道南・道央」、「北海道 道東・道北」は昭和42年の発刊。中身は時代背景がぷんぷん匂う内容でいっぱいです。

     読んでいると、更科源蔵氏(詩人)のエッセー「さいはての秘境」のタイトルが目に留まりました。抜粋すると、
     「秘境知床というので行ってみましたが、地の果ホテルなんてのがあって驚きました。(中略)日本の観光業者の宣伝を本当に受けて、業者の導くままに旅をすると、よくこうした苦さを味わわせられる。
     だいたい簡単に観光客の行けるということは、すでに秘境でも何でもなくて、それは観光地なのである。
     秘境とは国語辞典によると「人の知らない場所」であって、本当の秘境も観光業者が手をつけてしまうと、秘境ではなくなってしまう運命にあるはずである(後略)」
     
     高度経済成長で、空前の団体(個人)旅行ブームを迎えていた当時の更科氏の指摘は、当時も現在もさほど変わっていないのだな、と痛感しました(笑)

     ここでいう「秘境」を「秘湯」に置き換えて考えても、「秘湯」と呼ばれる宿ほど絶大なる人気があり、「野趣あふれる風呂」に感動するケースが多い一方、土日は日帰り・宿泊客でごった返し、「みなさん知っているんですね、ここは秘密の湯ではないんですね」な状況も多々ありますよね。
    松前城をバックに演技する森口瑤子さん(右)と野際陽子さん

     民宿旅館 田園に宿泊した時、21時からHTB(テレビ朝日系)で土曜ワイド劇場を見ました。
     副題は「北海道松前で海の王者本マグロをゲットせよ」。渡島管内松前町に実在する「温泉旅館矢野」を舞台に、「温泉宿の仕掛け人」を称する3人が、経営、料理、もてなしの面からリニューアルを図るとともに、殺人事件も発生し大騒ぎに。犯人はフッくんです(笑)

     テレビでは、何十回も「温泉旅館矢野」の言葉が発せられていただけに、このドラマ内でリニューアルした「アメニティーを使わなかった客にはポチ袋にお金を入れて還元する」など、こうしたサービスは実在する宿でやっているのかな、と素朴な疑問が。まあ、ドラマと現実を混同すべからず、でしょうが(笑)

     うーん、この宿、まったくノーマークでした。GWは函館方面に行くので、ちょっとのぞきたいな、と思いました。テレビに煽られていますね(苦笑)
     
     ラストシーン、俳優の村田雄浩氏が入浴していたのは、料理旅館池の端(函館・谷地頭温泉)でした。
     主役の森口瑤子さん、ファンです(笑)