札幌から行く 『温泉宿』

    温泉宿 「宿泊」 好きな札幌人。風呂、食事、部屋、もてなし・・・ 「湯宿をめぐる冒険記」 & 「雑多な温泉話」

     「きょうはお客さんたちだけだから。(日帰り終了後の)夕方から、大きい方の男性風呂に一緒に入って、ゆっくりして下さい」。宿へ着くなり、シニアなご主人がニッコリ。

     今夜は館内貸切ですね。

    早朝、うっすらと雪が積もり、鹿が散歩していた
     ホロカ温泉旅館は、4年前に日帰り入浴で訪れた際、洋館の佇まいと温泉成分でデコボコした浴室の床が印象的でした。今回はじめての宿泊です。


    ◆白亜の洋館、時代止まった館内

    幌加龍神スルメを炙れそう
     築年数を重ねた白亜の洋館は、札幌の時計台をなんとなく思わせる造り。館内は洋風チックではなく、昭和の時代が止まったままの様相。客室の窓枠は「木」で、ねじしめ鍵のままですし、客室の煙突式石油ストーブも、年代を感じます。
     言い方を変えれば、そこかしこ「ガタ」がきています。


    ◆見事な析出物、源泉は4本

    男性風呂
     見事な析出物は、自然のアートと言えましょう。見ていて飽きません。「析出物眺めながら、軽くごはん3杯はいけるわ」という析出物ファン垂涎の湯宿です。函館の料理旅館池の端を思い出しました。

    硫黄泉の湯口女性風呂では、余ったお湯を捨てている
     味わいある湯口から、ほのかに香る硫黄臭。夜中もこんこん湧き出ており、入浴三昧でした。

     でこぼこした床に胡坐をかき、食塩泉の湯船からケロヨン桶で湯をすくい、髪を洗いました。シャワーも洗い場もない点が、湯治場風情かしら。

     ちなみに、硫黄泉、食塩泉の湯船は独自源泉なのは言うまでもありませんが、打たせ湯と1階洗面台の蛇口の湯も、それぞれ異なる源泉の湯を利用しており、宿全体で4つの源泉を用いていると、ご主人談。贅沢ですね。


    ◆ご主人手製の家庭料理に舌鼓

    白老スタイル
     夕食も朝食も部屋食。ご主人が作る食事は、本当の家庭料理プラスアルファですよ。グルメな湯宿ではないので、念のため。当方は、美味しくいただきました。

    ◆山峡の仙境で「キツネにつままれた」

    かんばん
     古びた看板に「山峡の仙境 ホロカ温泉」と、語呂の良いキャッチコピーが示すように、この湯宿は標高600メートル余に佇み、隣接地に素泊まり湯宿の鹿の谷があります。周囲に民家はなく、人里離れた山宿の雰囲気です。
     入浴中、窓外の鹿と目が合いました。早朝、外の景色を眺めていると、道路を鹿が悠然と散歩中。いやはや大自然の中に、人間がお邪魔していて恐縮です、と痛感。

     ちょっと気になった点は、客室の掃除が行き届いていなかったこと。天井の隅っこにクモの巣、畳の上にハエの死骸2匹に加え、テーブルがべとついているので、台拭きを借りたのですが臭かったので使用せず、濡らしたティッシュで拭くと汚れで黒くなりました・・・

     長年働いていた女性スタッフが辞め、混んでいる時期を除けば、ご主人が1人で仕切っているから、やむを得ないのかしら。たまたま、当方が宿泊した時だけこんな状態で、普段はピッカピカに掃除している可能性も否定できないなあ。

     なんて、好意的に記す理由は、2食6,500円で鄙びた風情、析出物いっぱいの浴室を、たまたま当方1組しか宿泊客がいなかったため「貸切」できて満足するとともに、ご主人が「好々爺」(こうこうや)とお見受けしたからかな。

    なぜかウ○チの臭いがキツカッタ(苦笑) 70歳代のご主人は、18年前にこの湯宿の経営を先代からバトンタッチ。トムラウシ温泉(新得町)の東大雪荘支配人からの転身でした。
     ぱっと見は「ガタイの良いシニアで、頑固そう」な印象でしたが、会話を重ねるうちに、「齢(よわい)を重ね、すっかり丸くなった」ように感じました。

     掃除が行き届かぬ湯宿なんて、「それだけはご勘弁」と、普段は感じているのですが、ご主人がニコニコしながら、わんちゃんを紹介してくれたり、よもやま話しているうちに、どうでも良くなってきました。

     好々爺のご主人がかもし出す魅力に、なんとなく惹かれてしまった自分がいます。

     そして、人里離れた「山峡の仙境」では、客室にクモの巣やハエの死骸は、むしろ当たり前のような気がしてきたのですから、なんともキツネにつままれた気分です。


     【追伸】 ホロカ温泉旅館の客室でハエの死骸を眺めながら、志賀直哉氏の小説「城の崎にて」(大正6年発表)を思い出しました。
     志賀氏は大正2年に山手線の列車にはねられ、重傷を負いました。それをモチーフに「城の崎にて」が執筆されたみたい。
     小説では、電車にはねられた主人公がリハビリで兵庫県・城崎温泉の宿へ逗留します。事故で死と対峙した主人公は、ハチの死骸の周りを元気なハチがブンブン飛び回っているシーンを見て、死骸は本当に死んでいるのだなと痛感するとともに、そこはかとない親しみを感じたようです。
     で、当方がホロカ温泉旅館の客室でハエの死骸を発見した時、第1印象は「単純に汚い」・・・かな(笑) 













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