札幌から行く 『温泉宿』

    温泉宿 「宿泊」 好きな札幌人。風呂、食事、部屋、もてなし・・・ 「湯宿をめぐる冒険記」 & 「雑多な温泉話」

     会津藩の指定保養所「きつね湯」を明治初頭に引き継ぎ、湯宿として代々経営してきた平田家は、高度経済成長にもバブル景気にも翻弄(ほんろう)されず、歴史ある建物を守り続けている。

     その結果、1996年(平成8年)創設された、国の登録有形文化財に第1号として登録された。登録有形文化財って築50年以上経過している再現が困難な建造物が対象らしい。北海道ではなかなかお目にかかれない、由緒正しそうな木造建築の湯宿はどんな感じかな。


    登録有形文化財の湯宿

    東橋の向こうに佇む向瀧
    玄関内 「アレだよ、アレ、見えたみえた」。タクシーの車窓から初めて目の当たりにする向瀧は、力強いオーラを感じる。

     「やっぱスゴイね」「そうだね、ここ泊まるんだよね」「うんうん、泊まっちゃう泊まっちゃう」。運転手さんが「お客さん、興奮し過ぎですよ。でも、そういうお客さん、結構多いんです」。

     鼻息荒く玄関に入ったのだが、飴色に染まる床や天井の木のぬくもりで心が落ち着き、木を格子になるよう組んでいる「格天井」の品の良さに気づいた。しっとりした和の風情、いいな。
    客室「のぎく」
     ただ古いんじゃなくて、手入れが行き届いている。客室は暖房も効いていてコタツもありつつ、ウォシュレットトイレを完備するなど、寒い冬でも快適性はバツグンだった。ただし、北海道の湯宿における「全館がんがん暖房」に慣れていると、廊下が肌寒いな、と思うのは致し方ない。



    清潔、品のある浴室

    貸切家族風呂前
    蔦
    きつね湯(男性) 大浴場が2ヵ所(きつね湯、さる湯)あるが、掃除が行き届いている。例えば、夕方に身体を洗った際、固形せっけんを入れたケースがぴかぴかだった。普通の湯宿であれば、ぬめぬめしている事例が多々あるだけに、これは嬉しい。湯船から湯が掛け流され、とっても清潔感がある。

     浴室天井は軽石を用いており、水滴を吸収する効果があるという。彫刻も施し、品を感じさせる造りに脱帽しきり。
    湯口(蔦)
     自家源泉の透明な湯(ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉)が、手を加えられることなく湯口からこんこんと注ぐ。湯口にナトリウム成分が結晶のようにこびりつき、湯力を感じる。個人的には貸切家族風呂(3ヵ所)が落ち着いた。



    郷土料理に特化

    夕食
     「地産地消は、当たり前!」「エビ、カニ、マグロなど海の食材は、主な食材となることはありません」「化学調味料、合成着色料、人工保存料、人工甘味料などは使用いたしておりません」「派手な演出はありません」。こんなふうに謳い、郷土料理に力を入れる。

     鯉のたたき、鯉の甘煮、ごんぼ湯、こづゆ・・・ 北海道から遠路はるばるやって来ただけに、会津若松じゃないと食せない料理の数々に思わず頬が緩む。鯉の甘煮はボリュームがあって、1人前は最初から手をつけず、もう1人前を2人で分け合って食べたが、やっぱり半分ほど残してしまった。仲居さんに聞けば「真空パックにお包みしますので、どうぞご自宅で食べてください」。いいサービスだなあ。

     一方、宿側が「派手な演出はありません」とぶっちゃける通り、海から遠い福島内陸部における郷土料理メーンだけに地味なメシと思うかも知れない。豪華な舟盛りの刺身や、和牛ステーキは出ないので悪しからず。



    いい接客、心地良い

    燈籠
     雪景色に染まる中庭で、80個あるという燈籠に火が灯る。複数の番頭さんが手分けして一つひとつ火を入れる、冬期間のイベントだ。きれいな景色を眺めながら「この湯宿のスタッフは、頑張っているな」の思いがよぎる。

     タクシーが玄関に横付けしようとすると、濃紺の作務衣をまとった番頭さんがわらわら駆け寄ってくる。ドアを開けるや否や、「いらっしゃいませ」「ようこそ」「お荷物を持ちましょう」「こちらへどうぞ」。おおっ、活気があるな。そしてソフトな応対だ。よくよく見ると、番頭さんは20~30代と思われ、みなさんとっても笑顔がまぶしい。
     「こちらへどうぞ」。日ハムの齋藤佑樹投手に似たさわやかな番頭さんが、私たちの荷物を持って客室まで誘導してくれる。右手にキャリーバックを持ってくれ、そして左手には・・・ あれ、私のリュックがない。

     玄関に忘れられたのかな、と思っていたら、私のリュックは番頭さんの背中に収まっていた。なんか新鮮な感じで、つれは「かわいい子ね」と喜んでいた。胸につけたネームプレートの若葉マークが、初々しさと一生懸命さを際立て、嬉しい気持ちになってくる。

     客室を担当してくれた仲居さんも若葉マーク中ながら、物腰柔らかい対応と笑顔で、ちょっぴり偉そうに言えば、教育が行き届いている。「お嫁さんにしたい仲居さんランキング」があれば、上位入賞は間違いない。

    福島名物「赤べこ」
     布団を上げ下げしてくれた番頭さんと四方山話となり、福島県の政治経済、そして会津人としての誇り高き歴史観を語ってくれ、「おお、博識で頼もしい人だな」と感じた。おそらく主任クラスの人だろう。湯宿のスタッフに地元のことを聞いても「よく分かりません」な返答が目につき、「そうですよね、地元のことって案外分からないですよね」と苦笑いするケースが少なくない中、向瀧の番頭さんは素晴らしい。

     素晴らしいと言えば、廊下の窓がピカピカなのだが、番頭さんが毎日きれいに拭いているそうだ。チェックアウト時に夕食と朝食を運んでくれた仲居さんが挨拶に来てくれ、宿が呼んでくれたタクシーに乗り、地元を語ってくれた番頭さんたちに手を振られつつ、宿を後にした。

     良い湯宿の条件って、開放的な露天風呂でも、てんこ盛りな刺身でもない。接客と清潔、そして湯使いと思う。シンプルなのだけれども、極めるのは難しい。それでも向瀧のスタッフは一丸となって取り組み、成果を上げている。

     休前日19,050円は、食事内容だけを見れば「同じ価格帯の湯宿は、もうちょっとゴージャス料理かな」と思い、いささか高めに感じるかも知れない。でも、この接客を受ければ「また来たい」と笑顔になること請け合い。それでいて登録有形文化財の建物を楽しめるのだから、お得感が増す。

     そして思うのが、向瀧レベルで接客する湯宿が北海道に広がればなあ。



     【追伸】2011年1月9日に泊まった福島県会津若松市の「向瀧」は、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に耐え、建物の破損はなかったという。宿ホームページによれば、被災者に対し格安の値段で客室を提供中。3月21日現在、物流の混乱に伴い、燃料や食糧の調達が滞り、「その日その日の出来る内容で、準備をしております」としている。

     今回の地震に対し義援金を贈りつつ、必要以上の自粛は控えて普段通りに消費することが、ニッポン経済の停滞を防ぎ、ひいては震災復興につながるのでは。札幌での日常生活をしっかり送りつつ、また奮発して再訪したいな、と思う。

    このコメントは管理人のみ閲覧できます

    2011.03.23 14:11  | # [ 編集 ]

    鍵付コメントさん、コメントありがとうございます。
    ご指摘のように、向瀧はスゴイ宿でした(笑顔)
    郷土料理、清潔な浴室、接客・・・ 忘れられない感動を受けた次第です。
    震災によるハードの被害を受けなかった向瀧にほっと胸を撫で下ろしてます。

    その一方、東北、関東など東日本一帯の方々のご苦労は、大変とご推察します。
    特に冷房が欠かせない夏場の電力は危惧されるところですね。

    被災しなかった私にとって、何か出来ることと言えば、短期的には義援金を送ること。
    そして長期的には一生懸命仕事して税金を納める(少ないですけど)とともに、「不謹慎」の陰口を恐れず普段通りに消費すること。
    今ある仕事をやめて被災地へ駆けつけても、やれることは少ないでしょうし、
    ボランティアとして復興支援がひと段落した後、どうやって新たな職を探すか、と考えれば、
    これまでのライフスタイルを崩さないことがベターなのかな、とオモッテマス。

    2011.03.23 20:19 URL | いっち #- [ 編集 ]

    とうとう、とうとう、今日、向瀧に行ってまいります!!
    ここまで長かった…。
    本州の本格的な旅館に、しかも有形文化財泊まるだなんて初めてです。
    一流の“おもてなし”というものを味わってきたいと思います。
    今日は、8時過ぎに出発にもかかわらず興奮して5時半には目が覚めてしまいました。

    復興支援のためにも、がんばって福島でいっぱいお金使ってきますo(^▽^)o

    2012.10.06 07:43 URL | りきりき #- [ 編集 ]

    りきりきさんへ

    GWに1度「待った」をかけられて以来、
    ついに・・・ですね!
    どうでしたか? 趣のある建物、接客、そして湯・・・
    感想は十人十色ですが、少なくとも北海道の湯宿には無い風情は、
    素敵に感じられたのだろうな、とご推察しております。

    向滝のある会津若松市界隈、ワタシはまったく観光しなかったので、
    もしお城とか見学してきたならば、羨ましいです~

    向滝以外にも他の宿に泊まったのでしょうか?
    詮索するつもりはございませんが、
    どこの宿をチョイスなされたのかも気になったりしてます(笑顔)

    まずは福島遠征旅行、お疲れさまでした!

    2012.10.08 21:00 URL | いっち #- [ 編集 ]

    今日、帰ってきました!
    向瀧、いい意味で色々とすごいところでした。

    まず、やはり建物に圧倒されました。
    部屋は水仙の間で、中庭を眺めては非日常を堪能しました。
    そして、番頭さんがあんなにたくさんいる旅館は初めてでした。
    外に出るにもすぐに下駄や雪駄を出してくれて、お姫様気分♪
    中居さんも終始自然な笑顔。疲れている時とかあるのかしら??

    お湯はやわらか~いお湯で、入った瞬間は熱くても、
    肩まで浸かると「あれ?そんなに熱くない。
    長湯もできちゃうわ~」と結構入ってられました。
    でも、さるの湯の熱さに早々にギブアップでした。

    料理も、私は満足!
    今回は章月での反省から、先に白米をリクエストして、
    先付けから白米と一緒に味わえ美味しかったです。
    素人では絶対にできない味付けの品々。
    プロの料理人の技が光っていると思いました。
    お持ち帰りで頂いた、鯉の煮付けに手を付けるのがもったいないです。

    取り急ぎ、報告です。
    会津のことや、他の宿についてはまた次回に。
    それではお休みなさい~。

    2012.10.08 23:05 URL | りきりき #- [ 編集 ]

    りきりきさんへ

    ご感想を伺い、とっても楽しまれたようで、こちらまでニッコリしました!
    水仙の間は、中庭に面したイイ感じの客室ですね。ワタシは野菊の間、だったので、眺めは川でした。
    そうそう、番頭さん、多いですよね(笑顔)
    宿についたら、わらわら群がってくる感じ、あれ、好きです(笑顔)
    しかも、キビキビしていますし。あんなふうにもてなされたら、
    こちらまで「日々の仕事、こんなふうに頑張ろう」と元気をもらうような、そんな気がします(笑)

    アルコールを飲まない方は、後出しの最後に供される白米・味噌汁は、
    最初から出してほしいですよね。と、飲まない親戚縁者は申しております(りきりきさんもそうですか?)
    宿のおまかせではなく、ご自身のペースをオーダーするって、
    旅慣れているな、と思いました(笑顔)
    鯉の煮付け、あの真空パックで持ち帰りサービスは、ありそうでなかなかないのかも知れません。
    向瀧の宿泊客ニーズを捉えたサービス、改めてナイスと感じました。

    ではでは。また楽しいお話をお聞かせ下さいませm(_)m

    2012.10.09 21:10 URL | いっち #- [ 編集 ]

    こんばんは。

    福島は3年ぶり2度目ですので鶴ヶ城や大内宿は今回はパスしました。でも、どちらも一見の価値ありですよ!特に大内宿は、まさに江戸時代そのままの地域で天然のテーマパーク状態でした。歴史があるっていいですねぇ。できれば宿泊することをおすすめしますが、温泉じゃないんですよね。近くには湯野上温泉という温泉地があるようです。

    向瀧の温泉は体に優しい温泉でしたが、東北にいったなら強烈な刺激臭のある温泉に入りたいと番頭さんに教えてもらった高湯温泉へ。こちらの温泉も、私たちの希望をよく聞いて、調べていただきました。地図までインターネットでプリントアウトしていただき感謝!
    共同浴場に入ってびっくり。脱衣所のドアを開けたらすぐに露天風呂でした。硫化水素が内風呂にこもったら危険だから露天しかできなかったとのこと。
    さすがです。お湯は川湯温泉の酸性度を低くした感じでした。
    含硫黄泉でしたので、カユカユが心配でしたがかけ湯をしつこいくらいしたら大丈夫でした。(ちょっとだけ痒くなったのですが)

    いつもの年なら裏磐梯の紅葉が見頃だったようですが、今年は遅れていて見られなかったのが残念でした。

    そうそう、向瀧に泊まった日の昼に、喜多方ラーメンを食べました。うう~ん、これは札幌ラーメンに軍配を上げてあげたいかな?

    高湯温泉で温まったあとは、仙台へ。
    居酒屋で牛タンを食べたいことと翌日松島へ行くことを考え、仙台駅直結のメトロポリタンホテルにしました。立派で綺麗で、西洋人が多くて国際色豊かなホテルでした。レンタカーはこの日で返却。ホテルにて返却にしたので、チェックイン時ホテルの人が返却してくれると言ってくれて、これまた楽チンでした。

    翌日の松島へはローカル列車で行きました。快晴でしたが、う~~~~ん、正直、テレビで見てたほうが綺麗だった気が…。私だけかもしれませんが。
    仕上げに塩釜で美味しい寿司を食べて、塩竈神社にお参りして、昔のお金持ちが作った家の亀井宅を見て今回の旅行はおしまいです。なんだか贅沢な旅行でした~。

    2012.10.10 18:30 URL | りきりき #- [ 編集 ]

    そうそう、私はお酒は全くダメではなく、1~2杯は楽しめます。最近、ようやくビールが美味しいと思うようになり、向瀧でも地ビールをいただきました。

    でも日本酒は飲めないです。旅行先で、その地域の日本酒が楽しめたらどんなにいいかと思う今日このごろです。

    2012.10.10 18:36 URL | りきりき #- [ 編集 ]

    りきりきさんへ

    こんばんはです!
    過去に観光済みでしたか!
    大内宿、ワタシもかねてから気になっているのですが、
    やっぱり1度は訪れた方がよさそうですね。
    ああっ、行きたいって気分に(笑顔)

    酸性度が低い高湯温泉の硫黄泉、なかなか良さそうではないですか!
    紅葉は北海道を含め、遅れてますね。これからの楽しみということで(笑顔)

    仙台駅周辺に温泉のあるなしを関わらず、宿をとって周辺を観光する・・・
    ワタシも、そういう旅に憧れます。温泉が好きだと、泊まる宿すべてに「温泉」を求めてしまいますが、
    旅行全体を考えれば、あれも見たい、これも体験したいって、
    だから、泊まる宿は、温泉の有無に関係なく、交通的に便利だから、この宿に・・・
    塩釜の観光も楽しまれたようですし、
    いい感じに東北を楽しまれたようでニッコリしました。
    お話を聞いて、ワタシも行きたいな、と思っております~

    2012.10.11 23:24 URL | いっち #- [ 編集 ]

    りきりきさんへ


    日本酒、わたしも苦手です(笑)
    日本酒をプッシュする湯宿に泊まると、
    申し訳ない気分でいっぱいです~

    2012.10.11 23:26 URL | いっち #- [ 編集 ]

    こんにちは。今週末もどこかへお出かけでしょうか?
    ここ数日ぐずついた天気が続きそうで、げんなりしますね。温泉でも浸かってのんびりしたいですね。

    >温泉が好きだと、泊まる宿すべてに「温泉」を求めてしまいますが、

    これ、私もよくわかります~。
    今回も、2泊目を秋保か作並にしようか悩みました。でも、仙台の街並みや都会っぷりも感じたいと思ってしまって。その場合、選ぶ基準はまずは立地ですかねぇ。

    2泊3泊の旅行なら、温泉旅館は1泊で、その他は民宿やホテルを組み合わせていくのが自分に合ってるかな??でも、温泉には毎日入りたいので、日帰り入浴は欠かせない…とようやく自分なりの旅行スタイルが確立しつつあります。

    あ、でもこれは道外の話であって、道内ならば、全ての宿泊に温泉を求める傾向にあります(笑)

    大内宿は、観光客が多い日中よりも少し時間を外した方がベターだと思います。観光客が多いと、本当に時代村のテーマパークのような印象が強く残ってしまうかと。そう言う意味では、宿泊するのが一番なんですが…。近くに湯野上温泉があって、ここの宿http://nishikiya.info/なんて、かなり良さそうだなぁと思ってます。いつかきっと!

    2012.10.13 07:23 URL | りきりき #- [ 編集 ]

    りきりきさんへ

    こんにちはです。昨日今日はひっそり生活してました。
    急激に寒くなってきたので風邪気味です~
    お互い、体調には気をつけて湯めぐりしたいですね(笑顔)

    りきりきさんの2泊3日の道外旅行スタイル、
    ワタシも見習いたいものです。何度か九州へ行きましたが、
    博多の夜、味わったことないですし・・・
    とは言え、ワタシの旅の目的は「気になる温泉宿に泊まる」
    なので、りきりきさんの境地に達するには
    時間がかかりそうです(笑)

    うすうす感じてましたが、大内宿は混んでいるのですね。
    賑わう黒川温泉街をテーマパークと感じてしまった心境を思い出しました。
    教えていただいた湯野上温泉の民宿・・・
    これで7,500円! これ良さそうですね!
    道内の温泉宿もイイですが、道外も興味しんしん。
    隣の芝生は青く見えてしまいます~

    2012.10.14 16:47 URL | いっち #- [ 編集 ]












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