札幌から行く 『温泉宿』

    温泉宿 「宿泊」 好きな札幌人。風呂、食事、部屋、もてなし・・・ 「湯宿をめぐる冒険記」 & 「雑多な温泉話」

    長閑な風情

     JR福島駅から距離にして32キロメートル、山道を車で1時間ほど走っただけで標高1,000メートルに佇む猪苗代町の1軒宿へ着いた。なんだか「おばあちゃんの家」を思わせる長閑(のどか)な風情で、盆休みに帰省しましたって気分に。

    このカットは「分校」に見える
     2010年(平成22年)から、8代目のご主人と女将さんが夫婦で切り盛りしており、大女将の名物おばあちゃんは隠居している。東日本大震災でひどく揺れたものの、湯治棟(明治10年建設)と本館はともに被害を免れた。

     外観の鄙び加減に比べれば、内部は古いものの、共同トイレ、風呂場までの通路など、真新しくリフォームされていた。共同の洗面所の蛇口から冷たい沢水が流れ、湯上がりにぐびり飲むと美味い。

    客室
     夏真っ盛りだけに、セミの鳴き声が聞こえ、昼間は暑いものの、客室の冷房は扇風機のみ。大きな窓を明け放すと涼しい風が舞い込んでくるが、網戸がないので夜は数匹の虫と格闘した。客室窓の下を川が流れ、水の音が清涼感を生む。山の中とあって、夜は涼しい。




    足元自噴 ぬるめの湯

    分析書
    夜の混浴 横向温泉の開湯は、江戸時代の寛文元年(1661年)にさかのぼる。

     宿ホームページをみると、以前の混浴風呂は、内風呂ながら浴槽を覆うように東屋が建ち、天井の梁が美しく組まれていたのだが、現在は東屋自体が撤去され、シンプルな風情となった。

     木製の湯船を満たすナトリウム-マグネシウム-炭酸水素塩泉は、湯船の床下の節穴から、時折「ポコッ」と湧き出てくる足元自噴。源泉温度は45度というが、いささかぬるい。体感温度37~38度だろうか、長湯しても体が温まらない。夏の盛りだけに爽快だったが、冬場はちょいとキツイかも知れない。
     「もともとぬるめだったが、東日本大震災の影響で、少し湯温が下がった」とご主人は打ち明ける。湯船の床下にある岩と岩の間から源泉が染み出ている構造なのだが、地震によって地下水も混ざるようになったと指摘。「ばあちゃんが言うんですよ、むかし湯温を上げるために地下水が湧出する箇所をなにかで塞いだことがあるって。今回の地震で塞いだところがズレたんじゃないかと」。雪降る頃までに対応する考えだ。

    混浴の浴槽に湯花が舞う(早朝)
    女湯で大量の湯花発見(深夜)
     それはそうと、混浴の浴室に入ると、ほのかに灯油の香りを感じ、透き通った湯をなめると、炭酸の苦味がする。深夜や早朝に浴びると、それまで見られなかった湯花が「これでもか」と言わんばかりに大量に舞っていた。




    自然の恵み 地の物を提供

    女将さんが裏山で採った山菜
    山菜料理はおばあちゃん直伝
    サクサクの天ぷら。女将さんは栄養士の資格を持つ
     女将さんが裏山から採ってきた山菜が、夕食朝食に化ける。「(山菜料理は)おばあちゃんに教わって、美味しいものを」(女将さん)。馬刺し(桜肉)や炭で焼く磐梯牛など、地の物にこだわったボリューム感のある家庭料理だった。



    帳場で四方山話

    看板
     チェックアウト時の会計は、玄関近くの帳場で行われた。6畳ほどの和室で茶の間な風情。ご主人と女将さんが畳に座っており、「どうぞ、まあ、楽にして座って下さい」と促され、われわれも腰を下ろす。お金を払うと、自然な流れで四方山話となり、10~15分くらい話しただろうか。話の節々から「8代続く湯宿を守っていく」の意気込みをひしひしと感じた。カウンター越しに宿泊料を支払って、はいサヨナラ、ではないもてなしに、福島人のあたたかさが伝わってきた。

     こんなふうに時間を割いて接客できる理由は、1日1組限定だから。そう、この湯宿を貸切で味わえるのだ。ただし、観光シーズンはこの限りではなく、ご主人は「様子を見ながら、1日3組はもてなしたい」と考えている。もしも「貸切」にこだわるならば、電話予約の際、きちんと確認を。

     福島市の市街から近いのに、こんなにひっそりした湯宿を味わえる。木造の古びた建物にウットリしつつ、足元自噴の湯に満足しきり。女将さん手製の料理は、下手な旅館料理よりずっと美味い。何より、1日1組の貸し切り状態を味わえたのだから、1人18,650円は値段だけ見るとちょいと高いが、貸切料込みと割り切れば、納得プライスかしら。

     朝食の炊き込みご飯と、自家製の山菜料理を御土産にもらいつつ、ご夫婦で見送ってくれる姿をバックミラー越しに眺め、ふと思う。「こういう湯宿の常連客になりたい」って。朴訥したご主人と、気さくな女将さんにまた会いたいな。
     札幌から遠すぎてなかなかアレだが、東北新幹線&レンタカーで1泊2日の旅が余裕でOKな首都圏在住者が羨ましい限りだ。

    わんちゃん


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    2011.08.16 15:22  | # [ 編集 ]

    遠路お疲れ様でした。

    混浴の方の東屋ですが、わたくしもいっち様訪問後に行って始めて知った次第です。
    確かに以前は一種霊妙な雰囲気が漂う空間だったのですが、ずいぶんと明るくサッパリした感はあります。

    湯温の件はわたくしも心配しておりますが、対応する方向ということでまずは一安心。なんとか以前のように戻ってくれればと思います。

    なんとか再訪したいと思う今日この頃です(^^)。




    2011.08.16 21:51 URL | 駅前旅館 #.vjKhiP6 [ 編集 ]

    いっちさん、こんばんは。

    お湯佳し、人佳し、食べ物佳し、と3拍子揃った湯宿ですね。

    1日1組限定だと泊まれる確率がかなり低いと思いますが、いつか是非行ってみたいものです。

    本当に素晴らしい所ですね・・・

    2011.08.17 19:08 URL | のむ #5sdbv7.M [ 編集 ]

    いっちさんこんばんは。
    東北旅行記、楽しく読ませて頂きました。
    以前から気になっていた宿です。
    温泉はもちろん、食事も派手さはないもののとても美味しそう・・・

    いっちさん、お互いないものねだりかな~
    先日行った○○荘は大盛況で(子供連れが多かった)兎に角賑やかでした。
    でも、お風呂は案外混み合ってなかったのでゆっくり入る事ができましたが・・・
    札幌在住だったら、閑散期に連泊出来るのになぁ~、と思った次第です。

    今週末は湯河原温泉に行きます。

    2011.08.17 23:23 URL | ちびさくら #- [ 編集 ]

    【鍵付コメントさん】
    ご訪問&ご感想ありがとうございます。
    首都圏に住んでいると、東北は遠く感じるのですか!
    伊豆、箱根、長野、栃木、群馬・・・近場の関東甲信越には、
    魅力的な温泉地がいっぱいでしょうから、
    頷くところがあります。
    「いまこそ東北へ」ということで、
    新幹線でびゅーんと巡られるのも楽しいかも知れません(笑顔)
    今週末に行かれる御宿、拝見しました。
    リゾートな感じで、こういう宿もいいですね!

    2011.08.18 05:53 URL | いっち #- [ 編集 ]

    【駅前旅館さん】
    以前、こちらの宿をオススメいただいたおかげで、
    このたび思い切って遠征できました。大変ありがとうございました。
    図らずもニアミスしたようですね(笑顔)
    混浴風呂・・・霊妙な風情! それを期待して行ったので、
    ちょっぴり残念でしたが、致し方ないのかと。
    湯温、やっぱりぬるいですよね。以前はもう少しアツアツだったのでしょうか?
    今後の動向に注目&期待したいところです~

    2011.08.18 05:54 URL | いっち #- [ 編集 ]

    【のむさん】
    おはようございます。
    そうなんです、3拍子そろったナイス宿でした(笑顔)
    1日1組限定とは言え、大震災の影響で客足は減っているようですので、
    いまがチャンスかも知れません。私は2週間前の予約でOKでした。
    ただし、1日1組限定はやめる方向で検討しており、
    予約が集中すれば「その限りにあらず」ですので、
    もしも行かれる時は、1日1組限定かどうかご確認を~

    2011.08.18 05:54 URL | いっち #- [ 編集 ]

    【ちびさくらさん】
    ○○荘、楽しまれたようで何よりです(笑顔)
    何年か前、冬に連泊した経験ありです。閑散期でしたら、
    食事やサービスの質は変わらないのに、けっこう安くなるのでいいですよね!
    ないものねだり・・・確かにそうですよね。札幌の周辺にも、いい湯宿はたくさんあるのですが、
    隣の芝生は青く見えるようです(笑)
    滝川屋、注目されてましたか~ 女将さん手製の山菜料理が美味しく、
    裏山で採れた野草の天ぷらはサクサクでした。
    湯河原、楽しい旅を祈念します。いってらっしゃいませ。

    2011.08.18 05:55 URL | いっち #- [ 編集 ]












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