札幌から行く 『温泉宿』

    温泉宿 「宿泊」 好きな札幌人。風呂、食事、部屋、もてなし・・・ 「湯宿をめぐる冒険記」 & 「雑多な温泉話」

    早朝6時 ケータイ鳴る

     十勝2泊3日の温泉旅。初日のふく井ホテルに泊まっていた早朝6時03分、ワタシのケータイ電話がプルプル鳴った。出ると男性の声で「あ~、グリーン糠平ですが、朝早くからスミマセンね」。聞けば「いやー、きょう(7月14日)泊まるってことですが、もしかしたら7月ではなく8月かも知れないかと・・・前にそれで失敗しちゃって」。予約の確認だった。「そうですよ、きょうですよ、伺っても大丈夫ですか」「はい、大丈夫です。いやいや、朝からスミマセンでした」。

     なんだか憎めない、微笑ましい電話だったが、それにしても朝6時にかけてくるとは、やっぱり早い。すっかり起きていたから(旅に出ると目覚めが早い)良いけれど、日頃はまだまだ熟睡タイム。ちょっと感覚が異なっているな、と思いつつ、なんだか面白そうな宿の匂いがしてきた。

    御宿
     「こんにちは、こんにちは」。14時半過ぎ、玄関先で何度か叫んだら、シニアなご主人が出てきた。「いやいや、ごめん、寝てたわ」。ああ、この方が電話の主だ。朝っぱらから予約確認の電話をくれたし、ずっと働きづくめだったのだろう。とぼけたしゃべりに思わず笑ってしまう。

     館内に客の気配はない。「団体さんが山登りに行っててね。夕方帰ってきますよ」。
     客室は6室。一番良さそうな角部屋に通してくれたのが嬉しい。すでに布団が敷いてあり、廊下に共同冷蔵庫がある。イイ感じの正統派な民宿だ。



    貸し切り対応の浴場

    美しい
     男性浴場はライオンの湯口からまっさらな湯が注がれ、何も手を加えていない。夏場とあってアツアツ過ぎるので、やむなく水をドバドバ入れる。扇形の湯船に美しさを感じた。
     対する女性風呂はまるで家庭風呂のようで狭すぎる。女将さんに聞いたら「(男性浴場の)脱衣所ドアは内側からカギかけられますから、仲良く入ってください」。貸し切りで楽しんだ。




    家庭料理 夜も朝も

     18時。食堂へ行くと、団体客はまだ来ておらず、われわれだけ。テーブルの上に夕食が並び、1皿1皿ていねいにラップがかけてあった。残業で遅く帰宅したサラリーマン氏の食卓に見える。これで「チンして食べてね」のメモ書きが置いてあれば最高のジョークだ。

    夕食全景
     おかずは、すべて女将さん1人による手作り。本当に飾らない家庭料理だ。この宿はご主人と女将さんが夫婦2人で切り盛りしており、きょうは団体客を含めると20人くらい泊まっている。だから早めにセッティングするのは仕方ないし、ラップをかけておくのは気遣いなのだ。

     夕食をつつきながら、ビール片手にほろ酔いのご主人に話を聞くと、この宿は長期の仕事関係者と山登りの客がメーン。ワタシのような観光客はあんまり来ないそうだ。話好きのご主人は秋田県出身。糠平界隈で四半世紀に渡ってドライブインや飲食店を経営し、今は営林署保養所を買い取って宿を経営している。商売の話とか釣りの話とか四方山話は尽きない。

     そんな中、女将さんがおもむろに食堂の窓を開け、何か食べ物を空中に放り投げると、猛烈なスピードで鳥が飛んできて空中キャッチし、空の彼方へ消えていった。一瞬の出来事に度肝を抜かれ、「なんですか、それ!」と。トンビに毎日のように餌付けしているとのことで、いやはや、すごいショーを見せてもらった。

    朝食全景
     夕食が終わった頃、女将さんから「あすの朝食は何時から?」と尋ねられ、「7時30分頃」と言えば、「あら、それは遅すぎませんか」「えっ???」「ウチは(山登りの人たちには)3時過ぎから対応しててね。通常でも5時から食べられますよ」。なんて早起き過ぎる宿なんでしょう。だから予約確認の電話が6時に鳴るんだな。

     ちょうど山登りから帰って来た団体さんが、女将さんに対し「ウチら、あしたは7時30分から朝食します」と伝えていたので、ああ良かった。とは言え、早朝5時に食堂を覗くと、すでに朝食がセットしてあるではないか。女将さん、お疲れ様です。




    目覚めはコーヒーの香りで

     朝方、客室でまどろんでいると、コーヒーの香りが鼻をつく。なんだろうと、1階のフロント付近に行くと、焙煎機で大量のコーヒー豆を乾煎りしているのだ。

    焙煎機
    うまい
     「息子がね、三国峠で売店をやってるものですから、そこで売るコーヒーを焙煎してるの」。朝食後、その焙煎した豆で落としたてのコーヒーを飲みながら、女将さんに聞いた。

     客室にコーヒーの香りが漂い、シャキッと目覚めるなんて、こんな経験かつてない。そこから妄想が広がる。20歳前後に初めてお泊まりした彼女のアパートで、ふと起きたら彼女がコーヒーを淹れていて、イイ香りに包まれながら一気に覚醒しつつ「おはよう」と。「あら、起きちゃったの。コーヒー飲む」なんてシチュエーション。若いってイイな。当然ながら、そんな経験ないけれど。

     三国峠の売店は冬期間閉鎖する。温泉民宿にこだわりコーヒーという、なんとも面白いギャップは、夏しか味わえないし、客入りの少ない平日だったら、焙煎しない日もあるかも知れない。おこぼれにあずかれてラッキーだ。

     コーヒーを飲みながら、上士幌町で生まれ育った女将さんの古き良き糠平の思い出話に耳を傾けた。

    気球体験。大人1,500円。5~10月の6~7時に実施
     団体客は早々に帰り、静かな宿で最後の入浴を味わう。清算手続きしてご主人に会計してもらった領収書に「上士幌営林署グリーン糠平」と記してあり、上士幌営林署の文字は二重線で打ち消していた。
     「良かったら、また来てね」。女将さんに笑顔で見送られた。夕食時に饒舌だったご主人は、清算後に奥の部屋に引っ込んだまま姿を見せなかったが、東北出身のオトコはシラフになるとシャイなので、これでイイのだ。

     アツアツの湯にじっくり浸かり、宿の方々と触れ合って、1人ジャスト6,000円。長期に泊まる仕事関係者や登山客メーンという宿の姿勢を念頭に置きつつ、思いっ切り身を委(ゆだ)ねれば、穴場な感じも相まって、じわり良さを感じられるはずだ。

    いっちさんこんばんは。
    私も糠平からほど近いニペソツ山への登山の時は、朝4時15分に起きて5時に宿を出発しました。普段観光旅行の時は8時にご飯なので驚異的な早起きで出発しました。私が泊まった宿は、朝ごはんもお弁当にしてくれました。おにぎりと漬物くらいかなと思ったら、なかなか立派なお弁当で嬉しかったです。
    こちらの宿は朝3時から食べられるなんて、本当に早起きな宿ですね。おかみさんは一体何時に起きて作ってるんでしょう?朝食べる方も、 3時からなんてお腹に入るんでしょうか?
    いっちさん以外のお客さんが全員登山客というのも頷けますね!

    話は変わりますが、再来週の連休で、憧れの北海道ホテル、そしてナウマン温泉に行ってまいります。いっちさんのリポート読みながら妄想しまーす。もちろん登山付きでーす。

    2013.09.02 18:51 URL | りきりき #- [ 編集 ]

    あのご夫婦の様子が目に浮かびます(笑)
    私は1泊朝食で宿泊しましたが、もう6年以上前・・朝食は似たようなものだったと記憶していますが、食堂はもっと殺風景でした^^;

    まだぬかびらで働いていたら、間違いなくお酒持って会いに行ったでしょうけど・・何となく残念です。
    いつぞやのように、またお会いしたいです^^

    2013.09.03 01:41 URL | のん #InnHFb.. [ 編集 ]

    お久しぶりでございます 先日
    二年ぶりの北海道は支笏湖温泉 翠山亭に泊まってきました 蟹懐石料理も美味しかったし 露天風呂付きの部屋も良いし総合的にとても良かったですよこれだけのレベルで料金も高くないと思います さすが北海道の人気高級旅館で満足でした  

    2013.09.03 16:11 URL | 宮城のかんた #- [ 編集 ]

    りきりきさんへ

    どうもどうもです。
    登山する際はみなさん早起きなのですね(スゴイ!)
    さすがに日常生活での早朝3時は、ごはんが喉を通らなさそうですが、
    山登りを前に、体力をつけなければなりませんから、
    なんだかんだで、もりもり食べちゃうのかも知れませんね(笑)
    客のニーズに応える宿に頭が下がります。

    それはそうと、山で食べるお弁当、きっと美味しいでしょうね(笑顔)
    糠平は登山客の基地でもあると、今回初めて知りました。

    北海道ホテル! 本当のホテル、という佇まいで、ワタシもまた行きたい宿のひとつです。
    ナウマン温泉・・・ノーマークの宿です。どんなところか、機会ありましたら、教えてくださいませ(笑顔)
    御天気に恵まれるとイイですね~ よき旅を!

    2013.09.04 21:50 URL | いっち #- [ 編集 ]

    のんさんへ

    こんばんはです。
    もう6年も前でしたか、お泊まりされたの!
    月日が経つのは早いものですね~
    おっしゃるように、宿はほとんど変わっていなのでしょうね。
    家族経営の温泉民宿ならではの変わらぬ良さ、というのもイイですね(笑顔)

    糠平って帯広駅から路線バスで1時間半・・・札幌から公共交通では遠いのですが
    車だったら近いな、と今回感じました。
    もっと早めに車を活用していれば、こちらこそご挨拶に行けました・・・
    ワタシでよろしければ、また遊んでくださいませ(笑顔)

    2013.09.04 21:52 URL | いっち #- [ 編集 ]

    宮城のかんたさんへ

    こちらこそ、ご無沙汰しております。お元気そうで何よりです。
    北海道へようこそ! 支笏湖温泉の翠山亭ですか。
    その昔、日帰り入浴&ランチを楽しんだ記憶がありますが、
    おっしゃるように高級感を感じるので、
    機会あれば宿泊を・・・と思いつつ、今日にあります。
    宮城のかんたさんが満足されたのならば、
    道民として一度は泊まりに行かねば、と鼻息を荒くしちゃいました(笑顔)
    全国各地、泊まりに行かれた際は、また、いろいろ教えてください!

    2013.09.04 21:53 URL | いっち #- [ 編集 ]

    こんばんは。
    雑感、エッセーか短編小説かと思ってしまう趣、感服の至りでございます。
    いつか機会をつくってこちらに参ってみたいものです。

    旅先での馥郁たる珈琲の香り、それだけで旅の興趣にひたりきってしまう今日この頃です。

    北海道が恋しいです(^^;)。

    2013.09.05 22:36 URL | 駅前旅館 #.vjKhiP6 [ 編集 ]

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    2013.09.07 16:40  | # [ 編集 ]

    いっちさんが、ナウマン温泉未体験だとはちょっと驚きました。泊まった感想をぜひぜひお知らせしたいと思います。

    糠平温泉が登山者の基地だということ、私も今回初めて知った次第です。登山後の温泉は本当に身にしみますからね〜。

    そうそう、おかみさんの煎れるコーヒー、私までコーヒーのいい香りに包まれた錯覚になりました。いっちさんの妄想にも笑っちゃいましたが。私も素敵な男性にコーヒー入れてもらいたい…。

    2013.09.07 17:58 URL | りきりき #- [ 編集 ]

    駅前旅館さんへ

    おはようございます。
    意外性だらけの温泉民宿で楽しかったので、
    気持ちをこめてまとめました(笑顔)
    旅に出て、コーヒー飲んで温泉入って・・・
    いやー、幸せですよね~
    秋の北海道、またぜひおいで下さいませ!

    2013.09.08 10:48 URL | いっち #- [ 編集 ]

    鍵付コメントさんへ

    ありがとうございます!
    北海道の温泉、たくさん浴びましたね~
    17湯のうち、ワタシ入湯経験は10湯のみですね。
    まだまだ回り切れていないと痛感しております(笑)

    楽しい夏休みだったことが伝わってきて、
    こちらまでニッコリします(笑顔)
    また、ヨロシクお願い申し上げます。

    2013.09.08 10:49 URL | いっち #- [ 編集 ]

    りきりきさんへ

    そうなんです、ナウマン温泉、どんなところか分からないので、
    ぜひぜひお教え下さいませ!
    温泉宿に泊まりに行くと、宿にこもって日帰り入浴に行かないので、
    北海道の温泉、まだまだ知らないところだらけです(笑)

    りきりきさん、素敵な旦那様がいらっしゃるではありませんか(笑顔)
    ワタシは日頃、自分でコーヒーを淹れてます。
    気兼ねしないで済むのでイイですよ(笑)
    でも、だから妄想しちゃったのかも知れません~

    2013.09.08 10:50 URL | いっち #- [ 編集 ]












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